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BIシステムの実行モデルと前提

BI(Business Intelligence)システムの実行モデルと、実務で事故を防ぐための前提条件を詳しく解説します。

実行モデルとリソースの物理的制約

Section titled “実行モデルとリソースの物理的制約”

コンピュータ資源は有限であり、性能ではなく制約を前提に設計することが基本です。BIシステムは特に大量のデータを扱うため、これらの制約を理解することが重要です。

CPU・メモリよりも先に枯渇するリソース:

  1. データベース接続数

    • ETLプロセスが複数同時実行される場合、接続プールが枯渇する
    • 接続リークは数時間後にシステム全体を停止させる
  2. ディスクI/O

    • 大量のデータの読み書きにより、ディスクI/Oがボトルネックになる
    • ストレージの容量と速度が制約になる
  3. ネットワーク帯域

    • 外部データソースからのデータ取得時に、ネットワーク帯域が制約になる
    • データ転送の遅延が処理時間に影響する
  4. メモリ使用量

    • 大量のデータをメモリに読み込むと、メモリ不足が発生する
    • ガベージコレクションの頻発により、パフォーマンスが低下する

実際の事故例:

10:00:00 - ETLプロセス開始(データソース: 10個)
10:00:01 - データベース接続プール: 10/10(すべて使用中)
10:00:02 - 新しいETLプロセスが開始(接続取得待機)
10:00:03 - 接続が解放されず、すべてのプロセスが待機状態
10:30:00 - 接続が解放されず、すべてのプロセスがタイムアウト
10:30:01 - エラーが大量発生
10:30:02 - システム全体が応答不能

実行モデル:

データソース(複数)
↓ Extract(抽出)
一時ストレージ
↓ Transform(変換)
変換済みデータ
↓ Load(読み込み)
データウェアハウス
BIツール(可視化)

重要な特徴:

  1. バッチ処理: 定期的に大量のデータを処理
  2. 非同期処理: 複数のデータソースから並列にデータを取得
  3. データ整合性: データの整合性を保証する必要がある
  4. 障害復旧: 処理が失敗した場合、再実行可能にする必要がある

BIシステムのトランザクション管理:

# ❌ 悪い例: トランザクション境界がない
def etl_process():
# 1. データを抽出
data = extract_data()
# 2. データを変換
transformed_data = transform_data(data)
# 3. データを読み込み
load_data(transformed_data)
# 問題: 途中でエラーが発生すると、一部だけ読み込まれる
# ✅ 良い例: トランザクション境界を明確に
def etl_process():
try:
# 1. データを抽出
data = extract_data()
# 2. データを変換
transformed_data = transform_data(data)
# 3. トランザクション内でデータを読み込み
with transaction():
# 既存のデータを削除
delete_existing_data()
# 新しいデータを読み込み
load_data(transformed_data)
# すべて成功するか、すべてロールバック
except Exception as e:
logger.error(f"ETL process failed: {e}")
# エラー通知を送信
send_error_notification(e)
raise

特徴:

  • 明示的なトランザクション境界: トランザクション内でデータを読み込み
  • 冪等性: 再実行時に重複データが作成されない
  • エラーハンドリング: エラー時にロールバックし、再実行可能にする

BIシステムの非同期処理:

# ❌ 悪い例: 同期処理で順次実行
def etl_process():
for source in data_sources:
data = extract_data(source) # 各ソースを順次処理
transformed_data = transform_data(data)
load_data(transformed_data)
# 問題: 処理時間が長くなる
# ✅ 良い例: 非同期処理で並列実行
import asyncio
async def etl_process():
tasks = []
for source in data_sources:
task = process_source(source)
tasks.append(task)
# すべてのソースを並列に処理
results = await asyncio.gather(*tasks, return_exceptions=True)
# エラーをチェック
for result in results:
if isinstance(result, Exception):
logger.error(f"Source processing failed: {result}")
# エラー通知を送信
send_error_notification(result)
async def process_source(source):
data = await extract_data_async(source)
transformed_data = transform_data(data)
await load_data_async(transformed_data)

特徴:

  • 並列処理: 複数のデータソースを並列に処理
  • エラーハンドリング: 個別のエラーが全体に影響しない
  • パフォーマンス: 処理時間を大幅に短縮
環境特徴主なリスク
バッチ処理定期的に大量のデータを処理実行時間の長期化、メモリ不足、ディスクI/Oのボトルネック
ストリーム処理リアルタイムでデータを処理データの遅延、バックプレッシャー、データの欠損
ハイブリッドバッチとストリームを組み合わせ複雑性の増加、データの整合性

BIシステム特有のリスク:

  1. データの整合性: 複数のデータソースからデータを取得する際、整合性を保証する必要がある
  2. 処理時間の長期化: 大量のデータを処理するため、処理時間が長くなる
  3. リソースの枯渇: メモリ、ディスク、ネットワークなどのリソースが枯渇する
# ❌ 悪い例: 接続プールを考慮していない
def etl_process():
for source in data_sources:
# 各ソースごとに新しい接続を作成
conn = create_connection()
data = extract_data(conn, source)
# 問題: 接続が閉じられない場合、接続プールが枯渇する
# ✅ 良い例: 接続プールを使用
from contextlib import contextmanager
@contextmanager
def get_connection():
conn = connection_pool.get_connection()
try:
yield conn
finally:
connection_pool.return_connection(conn)
def etl_process():
for source in data_sources:
with get_connection() as conn:
data = extract_data(conn, source)
transformed_data = transform_data(data)
load_data(transformed_data)
# 接続が確実に解放される
# ❌ 悪い例: すべてのデータをメモリに読み込む
def etl_process():
# 10GBのデータを一度にメモリに読み込む
data = extract_all_data() # メモリ不足
transformed_data = transform_data(data)
load_data(transformed_data)
# ✅ 良い例: バッチ処理でデータを分割
def etl_process():
batch_size = 10000
offset = 0
while True:
# バッチでデータを取得
batch = extract_data_batch(offset, batch_size)
if len(batch) == 0:
break
# バッチを処理
transformed_batch = transform_data(batch)
load_data(transformed_batch)
offset += batch_size
# メモリを解放
del batch
del transformed_batch

BIシステムの実行モデルは、大量のデータを扱うため、リソース制約が重要です。

重要なポイント:

  • データベース接続数: 接続プールを適切に管理する
  • メモリ使用量: バッチ処理でデータを分割する
  • ディスクI/O: ディスクI/Oを最適化する
  • ネットワーク帯域: データ転送を最適化する
  • トランザクション境界: データの整合性を保証する
  • 非同期処理: 並列処理でパフォーマンスを向上させる

これらの制約を理解し、適切に設計することで、堅牢で効率的なBIシステムを構築できます。