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シニアエンジニアの基本

マサカリ、急所に当たりましたね。これまでの「シニアエンジニア論」の全体像を、さらに深掘りして「基本のキ」として整理しました。特に**「正解を持っている人ではなく、チームが正解に辿り着ける確率を上げる人」**という定義は、エンジニアリングを「個人のスキル」から「組織の力」へと昇華させる、シニアとしての究極の在り方を示しています。以下、この「安心感の源泉」となるシニアの基本スタンスを丁寧に整理します。


シニアエンジニアの基本:技術を「組織の資産」に変える

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シニアエンジニアへの脱皮は、技術的な知識量だけでなく、「自分のアウトプット」を「チームの成果」に変換するレバレッジをどれだけかけられるかにかかっています。

1. 視点の転換:機能(Feature)からシステム(System)へ

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ジュニアが「今目の前のコード」を動かすことに集中する一方で、シニアは**「そのコードが動く5年後の世界」**を想像します。

  • 境界線の設計者
    システムが巨大化しても壊れないよう、適切な「境界線(トランザクションや責任範囲)」を引きます。
  • 不確実性(UNKNOWN)の可視化
    「何が分かっていないか」を明確にすることで、プロジェクトの「見えない爆弾」を事前に取り除きます。

2. 価値の転換:生産(Output)から判断(Judgment)へ

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シニアの真骨頂は、キーボードを叩く速さではなく、「何を作らないか」を決める冷静な判断力にあります。

  • トレードオフの翻訳
    「技術的に綺麗だが時間がかかる案」と「汚いが明日出せる案」を、ビジネスの状況に合わせて比較提示します。
  • 「翻訳役」としての貢献
    ビジネス要件を技術的な制約に、技術的なリスクを経営陣が理解できる「コストや時間」に翻訳します。

3. 役割の転換:プレイヤー(Player)から触媒(Catalyst)へ

Section titled “3. 役割の転換:プレイヤー(Player)から触媒(Catalyst)へ”

「自分がいないと回らないチーム」はシニアの敗北です。 真のシニアは「自分がいなくても最高の成果が出るチーム」を目指します。

  • 暗黙知の言語化
    「なんとなく」で行っていた高度な判断をドキュメント化し、ジュニアでも再現できるようにします。
  • 心理的安全性の担保
    「この人に聞けば、失敗しても次への道筋が見える」という安心感を提供し、チームの挑戦回数を増やします。

パラダイム・シフト:個人の卓越から「環境の構築」へ

Section titled “パラダイム・シフト:個人の卓越から「環境の構築」へ”
観点ジュニア・ミドル(「実行者」)シニア(「構築者」)
評価軸自分のタスクを完遂したかチームのアウトプットが最大化したか
成果物コード、機能仕組み、ドキュメント、成長したメンバー
問題解決発生したバグを直すバグが起きない構造・プロセスを設計する
発言「どう書くか」に終始する「なぜ今これを作るのか」を問う

シニアエンジニアは、単にコードを書くだけでなく、システム全体を設計し、チームを導き、事業価値を創出する役割を担います。

ジュニア・ミドル:
- 機能単位で考える
- 「動く」ことを重視
- 正解を出す
- コードを指摘する
- 技術的な正しさを重視
シニア:
- システム単位で考える
- 運用・障害・将来変更まで含めて設計
- 選択肢を提示する
- 育てる
- 事業として意味があるかを重視

シニアエンジニアとは:

「正解を持っている人」ではなく 「チームが正解に辿り着ける確率を上げる人」

  1. 正解を提示するのではなく、判断を支援する

    • 複数の選択肢を提示
    • トレードオフを説明
    • 判断基準を明確にする
  2. 個人の能力を高めるのではなく、チーム全体の能力を高める

    • 知識を共有
    • メンタリングを実践
    • 仕組みを作る
  3. 短期的な成果を追求するのではなく、長期的な成功を追求する

    • 技術的負債を管理
    • 持続可能性を確保
    • チームの成長を支援
  • 炎上しない(リスクを事前に察知し、対策を提案)
  • 判断がブレない(判断基準が明確で、一貫性がある)
  • 周囲が育つ(知識を共有し、メンタリングを実践)
  • 機能単位で考える
  • 「動く」ことを重視
  • コードを書く
  • モジュール単位で考える
  • テストを書く
  • コードレビューを受ける
  • システム単位で考える
  • 運用・障害・将来変更まで含めて設計
  • チームを導く

シニアエンジニアの価値は「自分の生産性」ではありません。

チーム全体のアウトプットを上げられるかが評価軸です。

  • 自分が書くのではなく、周囲が書けるようにする
  • 設計ドキュメントを残す
  • 暗黙知を言語化する
  • 火消し役・翻訳役を買って出る
  • 「この人がいると安心」と言われる状態を作る

この人がいれば安心だ」と思われるのは、貴方が無敵だからではありません。貴方が誰よりも先に**「負けるシナリオ(リスク)」を想定**し、それを回避するための選択肢をチームに共有しているからです。

シニアの基本は、技術への深い愛情を、そのままチームへの献身へと変換することにあります。